アスベストの事前調査では、書面や目視だけでは建材へのアスベスト含有の有無を判断できない場合があります。このような場合、分析調査を行うか、アスベストを含有しているものとして扱う「みなし判定」を選択することが可能です。
本記事では、アスベストのみなし判定の概要や流れ、分析調査との違いや選び方、メリット・デメリットについて紹介します。みなし判定を検討する際には、ぜひ参考にしてください。
アスベストのみなし判定とは
アスベストのみなし判定とは、事前調査でアスベストの含有が明らかにならない建材について、本来であれば分析調査を行うところ、分析を行わずにアスベストを含有しているものとして扱うことです。
通常、書面調査や目視調査だけでアスベストの含有状況を判断できない場合は、分析調査によって含有の有無を確認します。ただし、「アスベストを含有している」とみなし、アスベスト含有建材として必要な措置を行えば、分析を行わずとも工事を進めることが可能です。
みなし判定でも事前調査は必要
アスベストのみなし判定を選択する場合でも、事前調査を省略することはできません。アスベスト事前調査は、2021年4月1日施行の法改正で義務化が強化され、原則すべての解体・改修工事で必要とされています。
みなし判定は、あくまで分析調査を行わずにアスベスト含有建材として扱うためのものです。そのため、必要な調査や報告、工事に伴う措置は適切に実施する必要があります。
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アスベストのみなし判定の流れ

ここでは、事前調査からみなし判定を選択した場合の工事まで、基本的な流れを5つのステップに分けて解説します。
| 【アスベストのみなし判定の流れ】 1.事前調査でアスベスト含有状況を確認する 2.含有が不明な建材は分析調査またはみなし判定を検討する 3.みなし判定を選択した場合はアスベスト含有建材として対応する 4.事前調査結果を報告する 5.必要な措置を講じたうえで工事を進める |
1.事前調査でアスベスト含有状況を確認する
まずは、有資格者による事前調査を行い、建築物にアスベストを含む建材が使用されていないかを確認します。事前調査では、設計図書などを確認する書面調査と、現地で建材の種類や施工状況などを確認する目視調査を行います。
対象建材について、着工日や改修履歴などからアスベストが使用されていないことが明らかな場合に限り、原則としてアスベスト非含有と判断することが可能です。このような場合は、分析調査やみなし判定を検討する必要はありません。
なお、みなし判定を選んだ場合でも、事前調査の記録は省略できません。法令では、調査を行った部分や、材料ごとのアスベスト含有の有無(みなした場合はその旨)などを記録し、3年間保存することが義務付けられています。
あとから調査内容を検証できるよう、該当部位の写真や図面への記載、みなし判定とした理由もあわせて残しておきましょう。
2.含有が不明な建材は分析調査またはみなし判定を検討する
書面調査や目視調査だけではアスベストの含有状況を判断できない建材については、分析調査を行うか、みなし判定を選択するかを検討します。
どちらを選ぶかは、建材の使用範囲や工事費用、工期などを考慮して判断します。
3.みなし判定を選択した場合はアスベスト含有建材として対応する
みなし判定を選択した建材は、アスベストを含有しているものとして工事を行います。
アスベストを含む建材は、建材の種類(吹付け材、保温材、成型板など)によって飛散性のレベル(レベル1〜3)があらかじめ区分されます。みなし判定を選択した場合でも、その建材がどのレベルに該当するかを特定したうえで、該当レベルに応じた最も安全な飛散防止対策や作業方法、保護具を選定して工事を行う必要があります。
4.事前調査結果を報告する
事前調査を実施したら、その結果を発注者に書面で説明するとともに、対象となる工事では行政への報告を行います。
発注者への説明は、工事の規模にかかわらず、原則として工事開始前に書面を交付して行わなければなりません。また、一定規模以上の解体・改修工事では、石綿事前調査結果報告システムを利用して、事前調査結果を行政へ報告します。
みなし判定を行った場合は、分析調査を実施していない建材について、アスベスト含有建材として扱うことがわかるように事前調査結果へ記録することが大切です。
5.必要な措置を講じたうえで工事を進める
事前調査や必要な報告を終えたら、工事内容に応じた飛散防止対策や作業員の保護など、必要な措置を講じたうえで工事を進めます。工事現場の見やすい場所には、事前調査結果や石綿に関する事項の掲示が必須です。
なお、アスベスト含有建材として扱った建材を撤去する場合は、廃棄物の種類に応じた適切な収集運搬・処分が必要になります。処分を委託する場合は、あらかじめ処理業者にみなし判定した建材であることを伝え、受け入れ条件を確認しておくことが大切です。
みなし判定では、実際にアスベストが含まれているかを分析によって確認していません。対象建材を含有建材として扱い、必要な措置を確認したうえで、安全に配慮して工事を進めましょう。
分析調査とみなし判定はどちらを選ぶべき?
分析調査とみなし判定のどちらを選ぶかは、施工規模や工法、工期、費用などを踏まえて判断します。なお、ひとつの工事現場に複数の調査対象建材がある場合、すべての建材について同じ方法を選ぶ必要はありません。建材ごとに分析調査とみなし判定を使い分けることは可能です。
たとえば、対象となる建材の面積・量が多い場合は、分析によってアスベストの含有状況を確認することで、含有していない場合の除去・処分費用を抑えられる可能性があります。一方、工事範囲が限られていて分析による費用削減のメリットが小さい場合や、分析結果を待つ時間がない場合は、みなし判定を検討できます。
以下では、分析調査、みなし判定が向いているケースについて詳しく紹介します。
分析調査が向いているケース
分析調査は、対象となる建材の面積・量が多く、アスベストの有無によって工事費用や作業内容が大きく変わるケースに向いています。具体的には、以下のようなケースです。
| ケース | 分析調査が向いている理由 |
| 対象となる建材の面積・量が多い | 外壁や広い範囲の天井・床などは、みなし判定をすると対象範囲全体をアスベスト含有建材として扱うことになります。分析調査で含有していないことが確認できれば、費用を抑えられる場合があります。 |
| 粉砕や機械解体を行う | 粉じんが発生しやすい工事では、アスベストの含有状況によって必要な対策や工事内容が変わります。分析調査で含有の有無を確認することで、実際の含有状況に応じた工事を検討できます。 |
| 着工まで時間に余裕がある | 分析には一定の時間がかかるため、着工まで余裕があれば、分析結果を確認してから工事を進められます。 |
| 周辺環境への配慮を重視する | アスベストの含有状況を確認したうえで、工事方法や飛散防止対策などを計画できます。 |
みなし判定が向いているケース
みなし判定は、工事範囲が限られている場合や、分析結果を待つ時間がない場合などに向いています。たとえば、以下のようなケースです。
| ケース | みなし判定が向いている理由 |
| 工事範囲がごく一部である | 穴あけを数ヶ所行う場合など、対象となる建材が少なければ、含有建材として扱っても工事費用への影響が小さい場合があります。 |
| 着工まで時間がない | 水漏れや設備の故障など、早急な修繕が必要な場合は、必要な措置を講じたうえで分析結果を待たずに工事を進められます。 |
| 手作業で撤去できる | 手作業で撤去するなど、粉じんの発生が少ないと考えられる場合は、みなし判定が向いています。ただし、必要な措置は建材の種類や作業内容によって異なります。 |
| 含有建材として扱う影響が小さい | アスベストを含む建材として扱っても、工事費用や工期への影響が小さい場合は、みなし判定が向いています。 |
分析調査とみなし判定のどちらを選ぶか迷った場合は、施工会社や調査会社にそれぞれの方法で対応した場合の概算費用と工期を確認しましょう。「分析調査を行う場合」と「みなし判定で対応する場合」を比較し、工事の規模や着工希望日を踏まえて判断することが大切です。
アスベストのみなし判定を行うメリット

ここでは、アスベストのみなし判定を選択する主なメリットを2つ紹介します。
| 【アスベストのみなし判定を行うメリット】 1.分析調査にかかる費用を抑えられる 2.分析結果を待たずに工事を進められる |
1.分析調査にかかる費用を抑えられる
みなし判定を選択すれば、アスベストの含有状況を確認するための分析調査を行わずに済み、分析にかかる費用を抑えられます。
特に、対象となる建材が少ない場合は、分析によって工事費用を削減できる金額より、分析にかかる費用のほうが大きくなる可能性があります。アスベストを含有しているものとして扱っても工事費用への影響が小さい場合は、みなし判定を選択することで、分析費用を抑えて工事を進められるでしょう。
2.分析結果を待たずに工事を進められる
分析調査では、現場でサンプルを採取した後、専門機関で分析を行い、結果が出るまで通常数日〜2週間程度(混雑期はそれ以上)の時間がかかります。
そこでみなし判定を選択すれば、分析結果を待つ必要がなく、分析にかかる期間をスケジュールに組み込む必要がありません。着工までの期間が限られている場合や、早急な修繕が必要な場合には、工期への影響を抑えやすくなります。
アスベストのみなし判定のデメリット
みなし判定には、分析調査にかかる費用や時間を抑えられるメリットがある一方、アスベストの含有を実際に確認できないことによるデメリットがあります。ここでは、みなし判定を選択する前に知っておきたいデメリットを紹介します。
| 【アスベストのみなし判定のデメリット】 1.アスベスト含有の有無を正確に確認できない 2.工事費用が高くなる可能性がある 3.作業・手続きの手間が増える 4.発注者(施主)の納得感が得にくい場合がある |
1.アスベスト含有の有無を正確に確認できない
みなし判定では、実際にアスベストが含まれているかどうかを確認できない点がデメリットです。
分析調査を行えば、専門機関による分析結果からアスベストの含有状況を確認できます。一方、みなし判定では含有の有無を確定させることなく工事を進めます。実際にはアスベストを含んでいない建材であっても、含有建材として必要な対応を行うことになります。
2.工事費用が高くなる可能性がある
みなし判定では、実際のアスベスト含有の有無にかかわらず、対象となる建材をアスベスト含有建材として扱います。そのため、対象範囲が広い場合は、除去・処分などにかかる費用が高くなる可能性があります。
たとえば、実際にはアスベストを含有していない建材でも、みなし判定をすると含有建材として除去・処分することになり、結果的に工事全体の費用が高くなってしまうでしょう。
みなし判定を選択する際は、分析費用だけでなく、アスベスト含有建材として工事・処分した場合の費用まで含めて比較することが大切です。
3.作業・手続きの手間が増える
みなし判定では、対象の建材をアスベスト含有建材として扱うため、工事内容に応じた飛散防止対策や保護具の着用などが必要です。たとえば、建材を手作業で撤去したり、散水によって湿潤化したり、作業場所を養生したりするなど、通常の工事よりも作業工程が増える場合があります。
このように、みなし判定は分析調査そのものを省略できる一方で、アスベスト含有建材として扱うことによる作業上の負担が生じます。
4.発注者(施主)の納得感が得にくい場合がある
みなし判定では、実際にアスベストが含まれているかを分析によって確認していないため、発注者から「含有しているかわからない建材なのに、なぜアスベスト含有建材として扱うのか」と疑問を持たれることがあります。
また、除去・処分にかかる費用についても、分析によって含有を確認した場合と比べて納得を得にくいケースがあります。そのため、みなし判定を選択する際は、分析調査を行わない理由や、アスベスト含有建材として扱う必要性、想定される費用などを事前に説明し、発注者の理解を得ておくことが重要です。
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現地では建材情報や調査箇所を図面上に記録し、撮影した写真とひも付けて管理できます。調査記録はPC管理ツールと連携し、分析依頼書や各種報告書の作成に活用できるほか、GビズIDの「石綿事前調査結果報告システム」への申請に使用するCSVファイルも出力可能です。
現場で記録した情報をそのまま報告業務に活用できるため、帰社後の写真整理や転記作業を削減できます。記載漏れや入力ミスなど、人的ミスの軽減にも役立ちます。
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